水銀除去装置

水銀除去装置

石油製品等に含まれる水銀を除去する確実で安価な装置です

水銀による被害

原油、天然ガス、シェールガス、コンデンセートには微量の水銀が含まれています。この水銀はアルミなどとアマルガムを形成し、金属材料の腐食割れを起こすことがあります。
例えば、アルジェリアやインドネシアの深冷分離装置の熱交換器を腐食させ、爆発事故を引き起こした事例があります。また、日本でもLPG施設の不具合や、エチレンプラントの熱交換器の腐食、配管溶接部の金属脆化などが懸念されています。このため、適切に水銀を除去することが求められています。

従来の水銀除去技術

原油や天然ガスなどには金属水銀、イオン水銀、有機水銀の3タイプの水銀が含まれていますが、従来の技術では、これをすべて無機水銀に転換させたあと、無機系の担体に硫黄化合物、ヨウ素化合物などを担持させた除去剤で除去しています。
この方法では、各タイプの水銀を無機水銀に変化させる前処理設備が必要なため、装置が複雑で高価でした。また、除去剤からの担持物留出の可能性もあります。

IHテクノロジーの技術

IHテクノロジーの水銀除去装置は、3タイプの水銀を無機水銀に転換せずにそのまま除去して1ppb以下まで低減することを目標として開発されました。

タイプ別水銀の吸着等温線

本技術は、愛媛大学副学長八尋秀則教授指導のもと、計算化学によって各タイプのいずれの水銀とも結合しやすい活性炭を見出し、この活性炭をベースに水銀吸着剤として開発したものです。
IHテクノロジーの水銀除去装置は、水銀を無機水銀に転換する工程がないため、装置自体が簡易で廉価、運転コストもかかりません。また、硬度の高い活性炭を使うことによって運転寿命も長いという画期的な技術となりました。


IH水銀除去装置の特徴

・各タイプの水銀を、前処理なしで目標1ppb以下まで除去できる
・設備は吸着剤を充填したベッセルのみ。前処理装置がないので廉価
・電気、スチーム、工業用水等のユーティティが不要なので、運転コストがかからない
・硬度の高い活性炭を使用しているため、自重による破壊が少なく、差圧が立ちにくい
・吸着剤の寿命が長く、交換頻度は非常に少ない(交換頻度は吸着剤充填量によります)

実績

水銀除去装置の外観

最初の装置は1996年に稼働。現在も稼働中
そのほか、国内製油所で約10基が稼働中

本技術の適用

LPG、ライトナフサ、ヘビーナフサ、排水処理設備の水銀除去
天然ガス、コンデンセート、シェールガスの水銀除去についても適用を検討中

導入手順

IHテクノロジーの水銀除去装置の導入につきましては、新規に除去装置を導入する場合と、既存の設備にIHテクノロジーの水銀吸着材を導入する場合があります。
いずれも以下の手順で対応いたします。

① 処理対象の性状、処理量、水銀濃度、除去目標等について、顧客に聞き取り
② 目的処理物の現物を使用してビーカーテストにより最適の水銀除去剤を選定
③ 最適水銀除去剤を充填したカラムによる通液試験による性能の確認
④ AIシミュレーションシステムによって実機を設計、稼働状況を把握
⑤ 除去剤の生産と実機への充填
⑥ 稼働後、定期的な性能の確認

受賞歴

2007年に石油学会により「ナフサに含まれる水銀除去装置の開発」として技術進歩賞を受賞
2010年にオマーン王立スルタン・カブース大学から「油田随伴水に含まれる水銀除去装置の開発」で功労賞を受賞
2019年に愛媛県から水銀除去装置と硫化水素除去装置が同時に「愛媛県スゴ技」に認定

カブース大学功労賞受賞後にルムヒ石油大臣を表敬訪問